2012/02/15.236
サプリメント
サプリメントの愛好者が増えている。
以前は、効果や衛生面での信用が今ひとつだったので、日本人のサプリメントに対する評価は低かった。
それが最近では、ビタミンやミネラル、アミノ酸や必須脂肪酸、更には、イチョウ葉やキャベツのエキスのように、天然素材から抽出した類まで、ありとあらゆるサプリメントが市場に溢れている。
さぞかし、日本の製薬会社や食品会社は、儲かっているだろうと思いきや、大半はアメリカからの輸入だそうだ。サプリメント先進国のアメリカでは、およそ七十パーセントの人が、サプリメントを常用していると言う。医療費が高額な事もあり、ちょっと体に変調を来たすと、医者に掛かる前に、サプリメントを飲んで様子をみようとする人が多い。
肥満大国ということもあり、心臓病で苦しむ人が多いので、その予防という意味合いが強いサプリメントが、良く売れているのだと言う。
日本でも、サプリメントに対する評価が見直された結果、日常的に摂取する人が増え、サプリメント業界は、追い風に乗った感がある。
栄養補助食品というと、普段の食事では不足しがちな栄養を補う為の食品である。
だったら、不足しないような献立を考えれば良いと思うけれど、個人の好みや病気などで、なかなか思うようにいかない。
そこで、手っ取り早く、サプリメントで補うという事になる。
けれども、病人の場合は仕方ないにしても、健康な人が、改善の余地があるにも拘らず、不足分をサプリメントで補うのは、私には、なにか横着なような気がしてならない。
やはり、不足しないように、バランスが取れたメニューを考えるべきではないのか？
それに、サプリメントなど飲んでも、ちっとも美味しくないではないか。
ビタミンＡが足らないからと言って錠剤を飲むなんて、私には到底考えられない。 そんな味も素っ気もない物を飲むより、中国産でも良いから、ウナギの蒲焼でも食べた方が遥かに良いではないか。
ビタミンＣが足らないからと言って、セール中のドラッグストアを駆けずり回わらなくても良いではないか。
駆けずり回るなら、八百屋ではないのか？
今は円高だから、アメリカ産の美味しいオレンジが安く買えるではないか。パウダー飲んで、どないすんねん？
日本人にカルシュームが不足しているのは、今に始まった事ではない。とっくの昔から、不足してるのだ。日本の土壌は、もともとがカルシュームが少ない火山灰が主だから、飲み水や農作物にカルシュームが入っていないのだ。
今更、カルシュームを浴びる程飲んで、どないすんねん？
メーカーが自ら、不味い、不味いと宣伝してる青汁飲んで、どないすんねん？
アロエやイチョウの葉っぱやキャベツやゴマ。どれ一つとっても，わざわざ錠剤にして飲む程の物じゃない。
アロエなんか、趣味で園芸をやってる家の庭を覗けば、手入れもされないで、持て余した鉢植えが、ゴロゴロ転がっているではないか。
挨拶代わりに、スーパーで買って来た饅頭の一つも持って行けば、喜んでアロエと交換してくれる筈だ。
イチョウの葉っぱなら、神社や新興の住宅地に行けば、それこそ捨てるほどあるではないか。葉っぱをむしってきて、天麩羅にして食べたら良いではないか。
認知症の予防と言うなら、夫婦でペチャクチャ喋った方が効果があると思うけどなあ？
キャベツやゴマを、わざわざカラフルなカプセルに詰め込んで、どないすんねん？
街の中華料理屋に行けば、キャベツやゴマを、ふんだんに使った料理があるではないか。 何も、高額なサプリメントなど買わなくても、家族で夕食に食べに行けば、お腹もいっぱいになるし、一石二鳥ではないか。
それでも錠剤に比べて摂取量が少ないと言うなら、中華料理のオヤジさんに頼んで、キャベツやゴマの量を、増やして貰ったらどうだ。
大盛り料金を取られたとしても、フカヒレやアワビの大盛りではないから、心配するには及ばないし、人生をエンジョイするには、その方がはるかに良いではないか。
大体、錠剤やカプセルを、なんの躊躇もなく飲めるなんて、私には考えられない。
しかも、お湯や水の力を借りてまで飲み込んじゃうなんて、全く信じられない事だ。
薬事法で保護されていない錠剤やカプセルを、いきなり体内に取り込む勇気は、私にはないからである。
医者から処方される薬なら兎も角、単なる健康補助食品を、薬と同じように信頼出来るものなのだろうか？
多々あるサプリメントの中には、インチキ臭い物も含まれているかも知れないという疑問が残る。そうであれば、飲んでも効き目があるかどうか、分からないではないか。
今まで、私がサプリメントを毛嫌いしていた理由がそこにある。
ところがである。私のサプリメントに対する認識が、大分偏ったものだった事が分かったのだ。
私はかれこれ十四年前に、早期の胃ガンで、胃の三分の二を失った。
胃を切り取ってしまうと、胃壁から分泌される或る種の蛋白質が欠乏して、ビタミンB12を吸収する事が出来ず、悪性貧血や舌炎、口内炎などを引き起こす。
健常者なら、肝臓に蓄えられているビタミンB12が、その蛋白質と結合して十二分に吸収出来るけれど、胃を切除した人は、外部から補給する以外に手がないらしい。
そうした事が原因かどうかは定かではないが、最近、舌に無数の赤い斑点が出来て、それがヒリヒリと痛むようになったのだ。 ネットで調べると、症状から舌炎に間違いなさそうだ。
口内炎も、以前よりは頻繁に発生するようになり、しかも、炎症が複数出来る。
そのうち治るだろうと、高を括って放っておくと、ますます酷くなる一方である。
口の中のあちこちが痛くて、美味しい物も美味しく食べられないのなら、人生の半分を失ったも同然である。何か打つ手を、考えないといけない。 サプリメント嫌いの私は、抵抗があったものの、ビタミンB12の錠剤を飲んでみようと考えたのだ。
早速、ドラッグストアに行き、数種あるうちからアメリカ製のサプリメントを選んで買って来たのである。
朝と晩に一錠づつ飲んでいると、あら、不思議。舌炎の赤い症状が消え、口内炎も下火になったではないか。食事も美味しく食べられるようになり、憂鬱だった気分が一転して、私は明るさを取り戻した。
今まで馬鹿にしていたサプリメントが、医者の処方箋にも勝る事が分かったのだ。
「う〜ん！効果覿面とは、こういう事を言うのか」
もしも、サプリメントがなかったら、どないすんねん？ （完）
脱稿日： 2012/02/14.316
