スパゲティーナポリタン 2010/04/18.191
スパゲティーナポリタン
ナポリタンとカレーライスは、私の大好物なので、食べたくなると自分で作る。
どちらも昼食として作るけれど、カレーライスは、パック詰めのレトルトカレーをお湯で温め、皿に取り出したカレーの上に、茹でたソーセージや卵などを乗せるだけの事だから、作るなどはおこがましい。
カレーライスは兎も角、私の自慢は、昔ながらのスパゲティーナポリタンである。
材料は、パスタ８０グラム、ベーコンの薄切り３０グラム、ピーマン、またはパプリカ(小）二分の一個、ナス(小）一個、タマネギ（小）二分の一、ニンニクひと欠片、これだけである。
あとは、調味料として、ウスターソースやトマトケチャップ、砂糖、塩、コショウ、オリーブオイルを適量使う。適量と言うところがミソである。
料理は何でもそうだと思うが、適量でないと美味しくない。ナポリタンにしても、何でも沢山入れれば良いと言うものではない。具が多ければ美味いだろうと言って、ベーコンや野菜を沢山入れると、パスタの味そのものが死んでしまう。
やはり、パスタの美味しさを生かす程度の具の量で良い。
特に香辛料にいたっては、入れ過ぎた為に、すべてがおじゃんになる事だってあるのだ。 だから、塩、コショウ、砂糖やソースなどは、細心の注意を払う必要がある。
ところが、細心の注意を払っているにも拘わらず、ニンニクを炒め忘れたり、場合によっては、肝心要（かなめ）の砂糖を入れ忘れたりして、がっくりする事がある。 腹が減って早く食べたいと思うと、つい焦ってしまい、束ねていたパスタの紐が切れたように、集中していた筈の神経が、途中でばらけてしまうからだろう。
それでも、自分で作ったナポリタンはホントに美味しいのだ。 考えてみれば、外で食べる料理は、必ずしも自分の舌に合っているとは限らない。
自分で作れば、自分の舌に合うように作るから、美味しいのは当たり前である。
隠し味に使う調味料にしても、好みに合わせて好きなだけ使って、濃い味、薄い味は自由自在と言う事になる。
だから、不味い料理は考えにくい。 私の作るナポリタンの美味さの秘訣は、ウスターソースだろう。トンカツソースでも中濃ソースでもない。さっぱりして、ちょっと辛目のウスターソースならば、私の舌に合う。
入れる量は、小さじ四分の一程度。砂糖も小さじ四分の一程度。 トマトケチャップは、２００ccのカップに八分の一、つまり２５ccの量で事足りる。
作り方の手順は、誰もがやるようにフライパンの中で、スライスしたニンニクを狐色になるまで炒め、香りを十分引き出しておく。次にベーコンを脂身が縮むまで炒め、、タマネギ、ナス、ピーマンの順にフライパンに投げ込むのだ。
野菜がしなっとなるまで炒めたら、最後に、トマトケチャップ、ウスターソース、砂糖を加え更に炒める。
あとは、オリーブオイルをまぶした茹でたパスタをフライパンに入れ、全体に色が付くように掻き混ぜるだけである。 これで十分美味しいスパゲティーナポリタンが出来上がるけれど、冷蔵庫の野菜室を掻き回して、残り物のシメジやエンリギなどのキノコが見つかれば、それらも有難く頂戴すると良い。
スパゲティーの専門店で食べると、千円以上のメニューになる事間違いなしだ。
今は、何処のスーパーに行っても、色々な料理が作れる料理の素を売っているので、それを使えば、私のようなものぐさな人間でも、簡単に作れる料理がたくさんある。
鍋物は勿論、スパゲティーやマーボー豆腐、牛丼や中華丼など、あらゆる料理の素があるので、単身赴任のサラリーマンや、料理下手の女性、独身男性などには好評のようだ。
百円ショップに行けば、どれにしようかと迷うほど沢山の料理の素が売られているが、何処のメーカーの物も、美味しく出来ているので、あとはその日の気分で決めれば良い。
難点を言えば、料理の素は舌の肥えた消費者を念頭にして作ってあるので、あまりにも無難な味付けになっている事だろう。 私のようにノスタルジックな味が好きな者にとって、美味すぎる味というのは、本能的にその料理の本質から外れると思ってしまうきらいがあるのだ。
だから、ホテルの味と言うか、老若男女を問わずに幅広く作られた味に弱い。 どちらかと言うと、家庭で作るような癖のある味が好きなのだ。ナポリタンなら、ちょっと酢っぱみのあるトマトケチャップの味を楽しみたいと思う。
出来れば、イタリアから輸入された瓶詰めのトマトを加えると、更に美味くなるけど、私の場合は、それほどの拘りはないので、普段はそれは入れないで作る。
実は、私が作れる料理はナポリタンやカレーライス、それに残り物の野菜を切り刻んで作るチャーハンなどである。その気になれば、カツ丼や、親子丼なども作れる自信はあるけれど、いまだかつて、作った事はない。
妻が死守する領域を侵したくないからである。
それに、カツ丼や親子丼は、昼飯に食べるには重い感じがする。昼は、ラーメンとかチャーハンとか、スパゲティーとか、うどん、そばの類の方が、軽くて良い。
我が家の昼食は、各人が好きな時間に、好きな物を作って食べる習慣になっているので、妻も自分の城を荒らされたとは思わないのだろう。
最近では、私がナポリタンを作り始めると、自ら進んで冷蔵庫から食材を出してくれる。
私が使いたくない食材まで出されるのは、ありがた迷惑であるが、あとで冷蔵庫に戻して、妻の面子を立てるようにしておけばそれで良い。
自分の好きなように作れるナポリタンやカレーなら、いくら食べても苦にならない。
カレーの場合だと、夕飯にカレーライス、翌日の朝食には、カレーをパンに挟んでホットサンドにする。昼食はカレーうどんと、三通りにして食べられるから便利である。 ところが、ナポリタンはそうはいかない。
量が多過ぎて、食べ残すような事は慎まなければならないのだ。残ったスパゲティーを、翌日温め直して食べると、パスタに粘りがなくボソボソして美味しくない。
だから、作り過ぎないように、パスタはぴったり８０グラムと決めている。 本当は１００グラムは食べたいところだが、腹八分目をモットーにしているので、妥協して８０グラムにしているに過ぎない。
パスタを盛り付け、その上に、粉チーズをたっぷり振り掛け、タバスコを数滴落とす。種から育てたバジルの葉を数枚千切って乗せれば、スパゲティーナポリタンの出来上がりと言うわけだ。
フォークで、チーズが絡まったパスタをくるくる巻いて、口に運ぶ迄のほんの一瞬、私の喉がゴロッと鳴る。
「こりゃ、美味そうだ！」ナポリタンを口に入れる前に発する第一声である。
「う〜ん、美味い！」一口食べ終わった時に発する第二声がこれだ。あとは無言でムシャムシャ食べる。
「あ〜、美味かった！」第三声を発する時点で、楊枝をくわえ、ウトウトとだらしなくソファに横たわっている私がいる筈である。
私が作るスパゲティーナポリタンを全国展開して、出店２０００軒の夢を見るのも悪くないか？
たまには、こんな夢を見るのも良いだろう。
(完）
脱稿日： 2010/04/16.272
