2009/12/18.181

                                                                                                     シンセサイザーラジオ

                                     どう、なっちゃってんの？


昔はトランジスターラジオと言ったけど、今は、シンセサイザーラジオと言うらしい。トランジスターラジオはトランジスターを使うから、トランジスターラジオと言うのは分る。
じゃあ、シンセサイザーラジオは、シンセサイザーを使うのだろうか？
けれど、シンセサイザーと言うのは何んだと言われると、お手上げである。
え〜と、何だろうなあ？　何かを合成するのかなあ？　電子回路に関係してるのかなあ？

シンセサイザーなら、小室哲也のようなミュージシャンが、薄っぺらな鍵盤楽器を使って演奏してる奴だろうと思うけど、それとラジオと一体どんな関係があるのかなあ？
まあ、そんな事はどうでも良い。兎に角、今はシンセサイザーラジオと言うのだ。
胸のポケットに入れて、巻き取り式のイヤフォンで聞く小さなラジオである。

二年前、私はそのシンセサイザーラジオを電気量販店で買った。
子供の頃からの慢性の中耳炎をこじらせ、軽度の難聴だった私にとって、どこでも持ち運びが出来るポケットラジオは、テレビの音声を聞くには、便利な道具だと思ったからである。
昔からポケットラジオと言えば、ソニーのトランジスターラジオだった。
私の頭の中にも、ソニーは世界一と言う概念がインプットされていたので、店頭で品定めをした時は、迷わずソニーのラジオに決めた。

一流メーカーのラジオが、その後になって飛んだ事態を巻き起こすなんて、夢にも思っていなかった。
使い始めて三ヶ月くらい経った時、不意に音が聞こえなくなってしまったのだ。手荒く扱った訳でもなく、ましてや、落としてしまったという事もないのに、聞いている途中で、す〜と聞こえなくなってしまったのである。
新しい電池に交換しても、聞こえない。明らかに故障である。

保障期間内の故障だからと思い、早速買った量販店に持って行った。修理係りの人は、メーカーに返送するので、修理に１０日ほど掛かると言う。
１０日も不便を強いられるのはちょっとなあ、と思ったけれど、他に方法がなければ仕方ない。ところが、三日目に量販店から電話が入り、修理が終ったので取りに来て欲しいとの事。

「ラジオを点検しましたら、メーカーに送らなくても、弊社の修理部で、イヤフォンの取替えが出来る事が分ったので、うちで修理しました」修理係りの店員が言った。
何の疑問も持たず使っていると、今度は二ヶ月半くらいで、またまたイヤフォンから音が出なくなってしまった。そしてまた量販店へ。

同じ故障で持ち込まれたラジオを眺め回していた修理係りの人は、済まなそうな顔で、
「すみません。もう一度お預かりして直しますので・・・」
それから、二日後に電話が来て取りに行くと、
「今度は大丈夫と思います。今回も新しいイヤフォンに取り替えましたので・・・」
修理係りの人は丁寧にラジオを梱包しながら、ペコリと頭を下げた。

イヤフォンを取り替えたと言うけれど、原因も分からず取り替えただけなら、何時また壊れないとも限らない。不安を抱えながら恐る恐る使っていると、案の定、またしても聞こえなくなってしまったのだ。
今度も三ヶ月をちょっと過ぎた頃である。世界に名だたるソニーのラジオがどうした事か？これで三回目の故障である。

またまた量販店に持って行くと、同じ修理係りの人が少々怪訝な顔で、
「おかしいですね。うちの修理部では、もう大丈夫と言っていたんですがね。今度はメーカーに返送して修理してみましょう」
それから、10日後、メーカーで修理されたラジオを引き取りに行った。
「今度こそ大丈夫と思います。メーカーにも充分事情を説明してありますから・・・」

ところが、それから三ヶ月程経った頃、またしても音が聞こえなくなったのである。
これで四回目の故障である。私は、これ以上量販店を当てに出来ないと考えた。
それでなくても、量販店の修理係りの言葉の端々から、私のラジオの扱い方に疑問を持っているらしい事が見て取れる。私はソニーのサービスセンターに直接に持ち込んで、故障の原因を探ろうとしたのだ。

サービスセンターの担当者は、イヤフォンだけの取替えでなく、ラジオ本体を新品に代えたいと申し出たので、原因を探る事なく、私は了承してしまったのである。
新品のラジオなら、もう大丈夫と思っていると、やや！またもや、聞こえなくなった。
この時点で、私はこの手のラジオは欠陥品だと断定したのである。

五回も同じような故障が発生するなんて、普通でない。サービスセンターに電話でクレームすると、これまで、この手のラジオに、傾向的欠陥はないと言い張るのだ。
私の場合は、一日凡そ７、８時間と長く使うので、それが原因ではないかと主張したのだが、それは関係ないと言い張った。それどころか、サービスセンターの担当者も、暗に私の扱い方を問題視しているようなのだ。それでも、今回も新品と交換する事になった。

その後も七回目、八回目と、同じような故障が二回続くと、困り果てたサービスセンターの担当者はこう言ったのだ。
「ちょっと難しい話にはなるんですが、稀に体内から発する電気が強い人がいるんです」
おい、おい、それじゃ、私は特異体質の持ち主と言うことかいな？
七回目の故障の際、お客様がご希望ならば、代金を返還すると言っていたが、私は飽くまでも、世界のソニーとしての信用に賭けて、故障の原因を究明して貰いたいと主張していたのだ。

新品にしても、平均して三ヶ月ともたない。このまま故障を繰り返し、何時終るとも知れないクレーム合戦の様相を呈してきた。
これにはさすがに、無責任な発言を繰り返してきたソニーの担当者も、会社の信用に関わると思ったのだろう。八回目の故障では、精密検査をするので、今度はしかるべく検査部門の方へ、故障品を送って貰いたいと言って来たのだ。
やっと、ソニーも重い腰を上げ、少しは真剣になってきたらしい。これまでの対応から、今回も傾向的欠陥はないと言い張り、新品の提供だけで終ると私は思っていたのだ。だから、故障の度ごとに送られてきた包装用の段ボール箱を、大事に保管していたのである。

故障したラジオを指示された場所に送ってから一週間程経つと、担当の人から電話が来た。
「当方でレントゲン検査をしたところ、イヤフォンから下三センチ程の箇所で、断線が発見されました。これが故障の原因でした」と、あっさりと認めたのだ。
やれ、やれ、やっと原因が分かったか。何故もっと早くレントゲン検査をしなかったのか？
「じゃあ、断線しないようなもっと太いケーブルを使ったら、どうなんです？」私の質問に、
「そうですねえ、それと・・・、設計上の問題もあってですねえ・・・」そのあと、彼は口ごもってしまった。

誰だ！　傾向的欠陥はないと言い張ったのは！
断線の原因も解明出来ず、改良の方法すらないと言うなら、立派な欠陥商品ではないか。
「本当に申し訳ないのですが、もう一度だけ新品を送りますので、使ってみて頂けないでしょうか？」
今回は馬鹿に低姿勢である。

その新品が届いてから、かれこれ三ヶ月になる。
そろそろ、傾向的欠陥が発生する頃である。今度また壊れたら、どうしよう？
購入代金を返して貰って、他社のラジオを買うのも良いが、ボタンを押すだけでチューニングが出来る機能を持ったソニーの方が断然良い。
ソニーは、これから先、何時まで新品を送り続ける積もりなのだろう？
今度、壊れたら九回目ですよ。世界に冠たるソニーさん、一体、どうするお積もりなんですか？
まさか、また傾向的欠陥はないと、居直る積もりじゃないんでしょうね？
                                                                                                                 （完）

脱稿日：　2009/12/16.263

＊新品と交換後、３ヶ月と４日が経過しましたが、今現在、故障はしていません。故障の原因が分ったので、今は腫れ物を触るような気持ちで扱っていますが、ちょっとくたびれました。その上、ソニーの担当者から、耳にタコが出来るほど聞かされた、傾向的欠陥と言う言葉が、頭に焼き付いて離れません。
ところがです。年が明けて２月１６日についに壊れてしまいました。とうとう９回目の故障です。それでも、今度は５ヶ月間もちました。故障品は翌日ソニーに返送しました。もう、返金して貰って、パナソニックのラジオを買おうかと考えているところです。でも、パナソニックはワンタッチ選局が出来ないので不便です。さて、どうしよう？
３月４日、ソニーから、検査の結果、断線が認められたとの電話があり、この際、区切りを付けるため、代金を返金する事で合意しました。
とうとう、世界のソニーも、正式にギブアップした形です。巻き込み式のコードが細過ぎる事が、断線の原因だと私は確信しています。
私も、これ以上関わるのは嫌ですので、返金されたお金を元に、ニコンのデジカメでも買おうかと考えているところです。
２年半に及ぶゴタゴタがこれで終了したので、ホッとしていますが、このラジオの購買者が、私と同じ目に遭わないように祈るばかりです。

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